【木は生きている】木は動くし、表裏があるから難しい
- lucy7child
- 6月25日
- 読了時間: 3分

こんにちは。Wood Life Designです。
「木は伐られても生きている」──そう聞いて、驚く方もいるかもしれません。
実は木材は、伐採された後も呼吸するように動き、暮らしの中でその“生きた証”を見せてくれます。
たとえば、フローリングの反りや隙間もそのひとつ。これは単なる欠陥ではなく、木という素材の特性が表れたものなのです。今回は、木の性質や反りの仕組み、木表と木裏の違いなど、家づくりの裏側に隠された“木と人との対話”を、わかりやすく解説します。
木は伐られても生きている?──木の家づくりの奥深さ
木は山に生えている間だけでなく、伐採された後も“生きている”ように動くことをご存じですか?
実は、家を建てた後に見られるフローリングの反りや収縮は、まさにその“動き”の一例です。時にクレームにつながることもありますが、これは私たち木の家をつくる者にとっては避けがたく、そして面白さでもある現象なのです。
木が動く理由──水分と木の性質
木が動くのは、内部の水分が徐々に抜けていくからです。例えばスギの木は、伐採された直後には自重の2倍ほどの水分を含んでいます。この水分が時間とともに抜けていくことで、木材は収縮し、サイズや形が変化します。フローリングの板の間に隙間ができてくるのも、乾燥によって板が縮むことが原因です。
反りの正体──赤身と白太の違い
木材が反る理由は、内部にある「赤身」と「白太(しらた)」の収縮の差にあります。
赤身:木の中心部。生命活動を終えた部分で、水分が少なく収縮も小さい。
白太:木の外側。成長が活発な部分で、水分を多く含み、乾くと大きく縮みます。
この収縮の差によって、木材は反りが生じるのです。また、赤身は水分が少ない分、腐りにくく、耐久性が高いのも特徴です。
木表と木裏──繊維と仕上がりの関係
板材に加工された木には、「木表(きおもて)」と「木裏(きうら)」があります。
木表:樹皮に近い面(=白太側)
木裏:芯に近い面(=赤身側)
木表は繊維の向きの関係で、カンナがよくかかり、つるつるとした美しい仕上がりになります。一方、木裏はざらざらとした質感になる傾向があります。そのため、家具や建具など、人が触れる部分には木表を使うのが基本です。
元と末──木の上下の使い分け
少し話はそれますが、木には「元末(もとすえ)」という概念もあります。
元:根元側
末:梢(こずえ)側
昔の大工は、柱や材木を使う際に、必ず元を下に、末を上にして組みました。自然な木の力を逆らわずに活かす、伝統的な知恵です。
鴨居と敷居に見る、大工の知恵
木表と木裏の知識が最もよく表れているのが、「鴨居(かもい)」と「敷居(しきい)」の使い分けです。
鴨居(引き戸の上):木表を下にして取り付ける
敷居(引き戸の下):木表を上にして取り付ける
これは、木が乾燥して反るときに、木表側に反る性質を逆手に取って、反りを抑えるためです。もし向きを間違えると、鴨居や敷居が内側に膨らみ、戸の開閉がスムーズにできなくなってしまう可能性があります。
現代の木材と大工の変化
今では流通する木材の多くが、事前にしっかり乾燥処理されているため、表裏の使い方を多少間違えても、以前ほど大きな影響は出ません。そのため、若い大工の中には、表裏をあまり気にしない方も増えてきました。
ただし、カンナの仕上がりや耐久性には今でも差が出るため、職人の知恵として残しておきたい技術のひとつです。
木と共に生きる家づくり
木には、人の手を離れてもなお“生きて動く”面白さがあります。だからこそ、木の家には深い味わいと、職人の知恵が活きる余地があるのです。
近年では和室の減少とともに、こうした技術を発揮する場も減ってきていますが、木と共に生きる家づくりの魅力は、今も変わりません。
家づくりでもしお悩みであれば、Wood Life Designにお気軽にご相談ください。
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